TANOKYU

6月の素材 レモン

  みかんに代表される柑橘類と呼ばれる果物は、品種の交配などや物流の世界的な流れに因り、多種多様な種類を入手することができるようになりました。朝食でたまご料理とグレープフルーツの組み合わせを楽しんだり、午後のティータイムにレモンを浮かべた紅茶を飲んだりすることは、ごく日常の風景でありそれらの輸入食品を食卓に載せることが、ことさら外国かぶれと見られるような時代ではなくなりました。特に手頃な価格と物流に際しての品質管理のしやすさから、柑橘類は輸入生鮮食品の中でも真先に私たちの食卓に登場しました。一説によるとレモンティーは、レモンを輸出農産物として販売先を世界に求めたアメリカによる、デモンストレーション用の飲み物だとか。

 それはさておき、レモンは料理や飲み物に入れて主に香りを楽しんだり、酸味や風味づけの調味料として使われる香酸柑橘類と言う仲間に分類されていることからも分かる様に、主となる素材の持ち味をさらに引き立てたり、マイナス部分をカバーしたりする場面で使われることが多い食材です。ですから、私どものように洋食を作る厨房には、欠かせない素材のひとつです。そこでひとつレモンを使った、ご家庭でも簡単にできて、なおかつ見た目が豪華なメイン料理をご紹介しましょう。

 生食用の帆立の貝柱を、一人あたり3個用意します。並べた帆立が重ならないサイズの鍋に、帆立を入れ白ワインを振りかけ、表面がうっすらと白くなる程度に蒸し煮にします。中まで火を通さず表面に壁を作る要領で蒸すのが、美味しく仕上げるコツです。一人前3個の帆立が、正三角形の頂点を形作るように各自の皿に盛り付けます。鍋の白ワインを半分まで煮詰め、生クリームを加えさらにとろみがつくまで煮詰め、ソースを作ります。仕上げにレモンを絞り入れ、パセリのミジン切りと塩・胡椒で味を整え、帆立にかけます。最後に帆立の上に小さな角切りのトマトや、イクラなどをあしらえば"帆立の白ワイン蒸しレモンソース"の完成です。


5月の素材 ブラック・ペッパー

  最近はどこのスーパーや食料品店でもスパイスの棚がかなりのスペースを占め、種類も豊富で見ているだけで楽しくなってしまいます。きれいなビンに入った、さまざまなスパイスを揃えたキッチンに立つと、あれも作ろうこれも作ろうと料理への意欲がわいてきます。ところが、実際は頻繁に使うスパイスは非常に限られた何種類かではないですか。買ったときは、こんなに少なくてすぐに終わってしまいそうだと思ったものが、いつまでも減らずに置いてあるのは皆さん経験する事のようです。私どもの厨房でも、日常よく使うスパイスはごく限られたものです。そうしたものは大きな業務用の缶入りを使いますが、たまにしか出番がないものは、皆さんと同じ小さなビンに入ったものが便利なのでよく使っています。

 そのようなスパイスの中で、最もよく使われているのがコショウでしょう。コショウにも幾つかの種類がありますが、そのなかでも挽きたてのブラック・ペッパーは、辛さと風味が際立ちます。白身の魚や色の淡い料理にはためらわれますが、その他の料理ならばなるべく挽きたてを使いたいものです。容器の蓋がそのままミルになったものも売られていますので、ミルがないのでと言う方にもお勧めです。

 さて、粒のブラック・ペッパーが手に入ったら、さっそく小手試しといきましょう。当店の人気ランチメニューのひとつ「ポークヒレ肉の黒胡椒焼き」はいかがでしょう。ポークのヒレ肉は5ミリ程の厚さに切りますが、一枚づつ切り離さず二枚分で一枚になるよう切り開きます。ある程度肉にボリュームがあるほうが美味しそうに見えます。両面にかるく塩をして、小麦粉を薄くはたきます。こうすることで、旨味を閉じ込めると同時にきれいな焼き色がつきます。片面に焼き色がついたら返し、ブラック・ペッパーを挽きながら振りかけ、フライパンに蓋をし火を通します。私どもでは焦がしバターのソースをかけて召し上がっていただいておりますが、お好みでいろいろ試してみてください。だだ、ヒレ肉は脂がなく淡泊ですから、多少脂分を加えたソースのほうが相性が良いようです。


4月の素材

 米は私たち東アジアや東南アジアの国に暮らす人々にとって、毎日の食生活に欠くことの出来ない主食ですから生産量や種類も豊富です。地球的規模で見た場合には、大部分はこの地域で生産され消費されるものが主流ですが、米は今や意外と様々な地域で生産されています。その中でも古くからよく知られているのが、地中海沿岸のイタリアやスペインなどの国々です。しかし、彼らは米を主食にしているわけではありませんから、私たちが米に対するのとは、かなり違うとらえ方をしているようです。彼らは米は野菜の一種と考えていますので、他の野菜や魚介類・肉などと組み合わせて料理します。

 代表的なものとしてスペイン料理のパエーリャやピラフ、イタリア料理のリゾットがよく知られています。いずれも組み合わせる素材によって様々なバリエーションがあります。それぞれの特徴としては、スペインのパエーリャ・ピラフが出来上がりがパラパラになるよう、余分な水分が残らないよう仕上げますが、イタリアのリゾットは水分が少なめのお粥といった感じでしょうか。どちらも永い時間の中から生み出されてきた食文化のひとつですから一概に断定はできませんが、日本人から見た場合水分の多いリゾットの方が食感に馴染みがもてる様な気がします。

 リゾットはパスタと同様に、前菜と主菜の間にスープの代わりに食べる料理です。パスタもそうですが、仕上げはすこし芯がのこるくらいのアルデンテにするのがコツです。リゾットには野菜・魚介・肉・香辛料などあらゆる素材が組み合わされますが、なかでもスプマンテと呼ばれるスパークリング・ワインを使ったものや、ブルーチーズを使ったもの、イカ墨を使った真っ黒いリゾットなどユニークなものもあり、あらためて東西の食文化の違いを思わずにはいられません。逆にイタリアでは使われない東洋的な素材を使ってオリジナルメニューを創ってみるのも楽しいかもしれません。ワインの向こうを張って吟醸酒リゾットなんていかがでしょう。


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