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1月の素材 バルサミコ

 イタリア料理は戦後アメリカ経由で我が国に紹介され広まっていったため、以来スパゲッティーやピッツァなど、比較的軽食の部類に含まれがちなものが主流を占めていた時代が永く続いて来ました。それ以外にさまざまな料理があり、フランス料理ほど肩ひじ張らず、なおかつリーズナブルな料金で本格的な味が楽しめる店が増えてきたのはここ十数年来のことです。流行に敏感な人々を中心に一時はイタリア料理が、おしゃれなグルメとしてもてはやされたのは、記憶に新しいところです。そのせいもあってイタリア料理に使われる食材も馴染みのあるものが多くなってきました。

 今回取り上げるバルサミコもそのような食材の一つです。テレビの料理番組などでもしばしば眼や耳にする機会のあるバルサミコですが、自分で使った経験のある方はまだまだ少数でしょう。使い方に難しいテクニックが要るわけではありませんので、気軽にキッチンの調味料の仲間に入れれば、料理の幅がぐっと広がります。最近では家庭向けの食料品店でも見掛けることが多くなりましたので、少量の物で一度試してみたらいかがでしょう。

 バルサミコはイタリア北部のモデナ地方で造られる、ブドウを原料とした黒酢です。高級なものは12年以上樽の中で熟成されたもので、その分値段も高く家庭で使うには適しません。家庭では2年から5年ものの、熟成期間の短いもので充分です。このタイプのものは濃度が無くさらっとしていますので、煮詰めてソースや料理の風味付けに用いるのが一般的な使い方です。一つ例を挙げますと、好みの野菜をオリーブオイルと塩コショーで和え器に盛ります。バルサミコを鍋に注ぎ弱火で3分の1位まで煮詰め、生クリームを加えさらに適度な濃度になるまで煮詰めたら、熱いまま先ほどの野菜に廻しかけます。あたらしいタイプのサラダとして家族や仲間におおうけすること間違いなしです。


2月の素材 セロリ

 セロリはすっかり日本の食卓にもお馴染みとなって、ご家庭ではサラダやスティック野菜、漬物などで召し上がる事の多い洋野菜ですが、好き嫌いの度合いがとても激しいい野菜の代表とも言えそうです。山崎まさよしのヒット曲”セロリ”の歌詞にもあるように、物の好みの大きく分かれる象徴として取り上げられているような個性の際立った野菜です。特にその個性が最も顕著に現れた、あの独特の香りに好みの分岐点があります。私は先年初夏のころ、信州の松本近郊で辺り一面セロリ畑の中の道を車で走ったことがありましたが、開け放たれた窓からの風はセロリが嫌いな人が乗っていたら気を失いそうな香りの洪水だったのを、はっきり思い出します。

 そんなセロリですから嫌いな人にとっては、食べるのはもとよりなるべく遠ざけたい野菜のようですが、以外と気づかないうちに口にしているものです。と申しますのは、私たちが造る洋食の味の基本であるソースや、様々な出し汁(フォン)にはセロリは欠くことのできない大事な野菜だからです。魚介や肉の旨味を引きだしたり、料理の邪魔になる嫌な匂いを消したり、香りを添えたりとその役目は多岐にわたります。セロリが無ければ現在の洋食は、かなり様子の違ったものになっていたかもしれません。

 家庭でソースや出し汁から料理を造るのは手間や時間を考えると、あまりお勧めしませんが、煮込み料理を造る時には是非セロリを使ってみてください。仕上りがぐっと深味のあるものになります。煮込み料理と言ってもビーフシチューなどの本格的なものでなくても、カレーやミートソースなどの普段の定番料理からはじめてみてください。いつものようにタマネギと人参を炒めるときに、セロリを加えるだけです。量は人参と同じくらいで結構です。あまり多いとセロリの香りが勝った、すこし個性の強すぎるものになってしまいます。こうして次第に使う料理の幅を広げ、使い方をマスターしていけば、セロリはお台所の常備野菜のひとつになってゆくことでしょう。


3月の素材 牛乳

 普段の私たちの食生活の中でとても馴染みが深く、最も栄養価の高い天然食品が牛乳です。日常の何気なく口にしている天然食物は、どれをとっても食品になる目的で生まれてきた物ではありません。ですが、唯一乳類は子供を育てるために、始めから飲まれる事を目的に生成された大事な食品です。それゆえ栄養バランスに優れ、ほぼ完全食品に近いとも言われる牛乳は、家庭の食卓でも欠かせない物のひとつです。私どもの厨房でも牛乳はよく使いますが、家庭で消費される量と較べてもさほど多いとは言えないと思います。意外と思われるかもしれませんが、牛乳を原料にしたバターや生クリームなどの乳製品の使用頻度の方が多いかもしれません。と言いますのは、牛乳そのものが表舞台に出る料理があまりないからです。たえず主役を引き立てる脇役に徹している食材といったところでしょうか。

 そんな控えめな脇役も、ホワイト・ソースを仕込むときは看板俳優に変身します。このときばかりは牛乳の独壇場です。なにしろ、殆どが牛乳でできているソースなのですから。あとは少しのバターと小麦粉が顔を出しますが、彼らは文字どうりつなぎ役に過ぎません。成功の秘訣は火加減だけです。バターで小麦粉を炒める時も、決して急がずじっくりと火を通し、温めた牛乳を少しずつ注ぎルーと馴染ませててゆきます。このとき"ダマ"ができてしまい、滑らかなソースに仕上らない失敗例をよく耳にしますが、冷たい牛乳を一度に注ぎ入れないことです。弱火でゆっくりゆっくり、鍋底を木のへらでかき混ぜながら気長に作業するのが唯ひとつのコツです。

 このソースがあれば、お子様の大好きなグラタンもホワイト・シチューも思いのままです。すこし多めに造って密封容器で保存すれば、不意の来客にもあわてる必要がありません。有り合わせの野菜とストックしてある冷凍の魚介類が、あっという間に"春野菜とシーフードのクリーム煮"に大変身となります。よく冷えた白ワインを添えれば、おしゃれなディナーの始まりです。


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