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塩は人間が生きてゆくうえで、水や酸素などとともに無くてはならない物の一つですが、古代においては経済的な役割や社会的役割をも担う重要な働きをしていました。多くの地域で税金や労働報酬として塩が用いられていました。英語のサラリーは、塩を意味するラテン語がその語源であることはよく知られているところです。日本では祭礼や儀式の際に神聖なものとして使われることが多く、現在でもそれが受け継がれています。しかし、最近では調味料としての役割が専らで、それ以外の意味合いは薄れてきて本来塩が持っている性質が利用されているに過ぎないと言えます。 塩は日本では長く国が塩専売法によって一元的に管理してきたため、自由に製造や販売ができませんでしたが、97年に自由化され様々な種類の塩が手に入るようになりました。それまではイオン交換によって、いわば工業製品的に造られた塩がほとんどを占めていた食料品店の棚に様々な塩が並んでいます。それと同時に海外からも特色ある塩がたくさん輸入されるようになってきています。外国で生まれた料理はやはりその国で使われている塩や調味料を使って造るのが一番です。 輸入された塩のなかでも、フランスのブルターニュ地方で造られるゲランド産の塩はよく知られています。これは海水を塩田でダイレクトに結晶させた塩で、海水に含まれるミネラルのうまみが凝縮されたナチュラルな味わいが特徴です。塩田に引いた海水に最初に浮かんできた結晶は、フルール・ド・セル(海の花)と呼ばれ特に珍重されています。職人が手作業で作り出すため塩としては大変高価ですが、甘みや苦みなどが複雑に入り交じったうまみの濃い塩です。最近ではスーパーの棚でも見掛けることが多くなりましたので、いちど使ってその違いを確かめてみてください。きっと手放せなくなりますよ。
普段私たちは"とうがらし"と聞くと、そばやうどんにかける七味唐辛子や、キムチなどの朝鮮半島の料理、マーボ豆腐に代表される中華料理などが真先に思い浮かびます。そこで、"とうがらし"は東洋のスパイスなのではないか、と思われる方もあるかもしれませんが、原産地はアメリカ大陸の熱帯地方で今や世界中で約200種類もの品種が栽培されているそうです。たとえばチリペッパーやカイエンヌペッパー、タバスコソースなどみな"とうがらし"の仲間です。辛くはありませんが風味付けや色付けに使われるパプリカも仲間のひとつです。 西洋料理では辛味のスパイスにはコショウが主に使われるため、とうがらしはそれほど目立った存在ではないように思われがちですが、いろいろな料理に重要な役割をはたしています。とりわけ地中海沿岸の国々では様々な料理にたくさん使われています。それは気候風土や料理に使われる食材の影響がもたらすものと大いに関連があるのではないでしょうか。温暖で乾燥した気候と魚介類がふんだんに使われる料理には、コショウよりもとうがらしの辛さがよりふさわしいのかもしれません。 とうがらしを使ったとても簡単で美味しいソースをひとつご紹介します。厚手の鍋にみじん切りにしたニンニクと種を取ったとうがらしを、オリーブオイルを注ぎ弱火でゆっくり香りが出るまで炒めます。そこにトマトの水煮缶をジュースごと加え、トマトをつぶしながら火を通します。あまり煮詰めすぎず、トマトの酸味を残すのがこつです。塩で味を調整してソース・アラビアータの出来上がりです。アラビアータはイタリア語でおこりんぼうのことです。辛いので顔が怒ったように赤くなるからその名が付いたそうです。パスタにとても相性のよいソースです、お試しを。
ベーコンはハムやソーセージとともに、最も身近な食肉加工食品です。ご家庭でも常備されていて、ベーコンエッグや野菜のベーコン巻きなどに利用されている方が多いかと思います。私どもにとってもベーコンは、欠かせない重要な食材なのですが、ご家庭で召し上がるお料理のように、そのままの姿でお皿の上に登場することはあまり多くありません。なぜかと申しますと、私どもはベーコンには、主になる素材の持ち味を引き立てる、黒子の役を振り付ける事が専らだからです。ご存知のように豚の三枚肉を薫製にしたベーコンは、肉の旨味が凝縮した食材です。タマネギ・にんじん・セロリ等の香味野菜が和食だしの昆布にあたるとすれば、ベーコンは動物性のだしの鰹節や煮干しにあたります。ベーコンを使うことによって料理に、味の奥行きを与えるわけです。 秋も深まってきますと、煮込み料理の温かさが嬉しいものですが、煮込み料理にはベーコンが大活躍します。特に鶏肉や豚肉などの淡泊な肉を使った煮込み料理には、欠かせないものです。野菜と素材の肉だけではどうしても、あっさりしていて仕上がりに味の深味に欠けます。そこで裏方として一役買うのがベーコンと云うわけです。鶏肉を使った簡単にできる煮込み料理を一つご紹介しますのでお試しください。”鶏もも肉の赤ワイン煮込み”です。 鶏肉は骨の付いたもも肉を肉屋さんでブツ切りにしてもらいます。みじん切りにしたニンニクとタマネギを深鍋で炒め、火が通ったところに細い短冊に切ったベーコンを加え炒めます。フライパンで塩コショウした鶏肉に小麦粉を薄くまぶして焼き、きつね色に焼き色がついたら先ほどの鍋に入れます。上から赤ワイン・市販のデミグラスソース・水を加え煮込みます。途中、何度か浮き油とアクを取り、肉が柔らかくなったら出来上がりです。一緒にニンジンやセロリを適当な大きさに切って加えると、一層風味とボリュームが出て色彩も鮮やかになります。
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