TANOKYU

9月の素材 トマト

 今や世界中で栽培されているトマトですが、原産地は中南米です。スペイン人が植民地から持ち帰り、やがて地中海沿岸を中心に改良を加えながら、広く栽培されるようになりました。やがて日本にも1700年代の江戸時代になって渡ってきました。当時は「赤茄子」などと呼ばれることもあったようです。日本では丸いトマトが一般的ですが、当時は茄子のような形をした種類の方が多かったのかもしれません。もともとトマトは茄子科の植物ですから、図らずも絶妙の呼び名が与えられたと言えます。

 その茄子形のトマトの代表格が、イタリア料理でソースにするのに最も適していると言われるサンマルツァーノ種です。果肉が厚く、種が少ないうえ完熟させてから収穫されるので濃厚なトマトソースに仕上げるのに最適の条件を備えています。イタリアン・レストランで使われるトマトソースは、生のトマトを除けば殆ど総てがこのサンマルツァーノ種を素材としています。輸入されるサンマルツァーノは皮を剥いた水煮缶詰になっていますので、使い勝手も申し分ありません。私どもは大きな業務用の缶を使いますが、最近では家庭用に手軽な少量缶も入って来ていますので、スーパーの棚で見かける事も多くなりました。

 基本のトマトソースなら御家庭でも簡単に造れますので、お試しください。少し余分に造って密封容器に入れておけば、いつでも思い立ったときにイタリアン・メニューが素早くできてしまいます。まず、厚手の鍋でみじん切りしたにんにくと玉ネギをオリーブオイルで焦がさないように炒めます。香りがたち玉ネギが透きとおってきたら、トマトの水煮缶を空け手でつぶしながら加えてゆきます。香り付けにローリエやバジリコを一緒に煮込みますが、無くてもかまいません。あまり煮詰め過ぎないようにソースの濃度になったら鍋の火を止め、塩コショウで味を整え出来上がりです。煮詰めすぎるとトマトの風味が無くなってしまいますので、少しゆるいかなと思う程度で火を止めます。肉や魚のソテーにかけたり、定番のパスタやピッザにとトマトソースの出番は無限にあります。一通り試したらオリジナル料理にもお使いください、意外と和風素材にも相性が良いので面白いメニューができますよ。


8月の素材 にんにく

 夏バテしていませんか。特に今年のように連日猛暑が続くと、8月もなかばを過ぎる頃には食欲不振であまり元気のない方が多くなって来ます。そのような時まっ先に思い浮かぶのが、にんにくを効かせたスタミナ料理です。そこによく冷えたビールでもあれば、より食欲も回復しようというものです。しかし、にんにくは強壮作用がある反面食べ過ぎると、胃腸を荒らしてしまう事もあります。まして暑さで弱った身体にはなおさらです。

 にんにくは今でこそ一般的に手にできる食材ですが、一昔前は家庭料理ではまず使われる事のない素材でした。現在のように世界中の食材がたやすく手に入り、その料理法もテレビや雑誌などで頻繁に紹介されるようになる前の家庭料理は、日本古来の伝統的なものでしたから、にんにくのように強い香りを持つ食材の必要性がありませんでした。経済的に多少のゆとりができると、手軽な楽しみの場として外食が盛んになり外国の料理を提供する店も増え、次第ににんにくも市民権を得てゆきます。さらに昨今のイタリアを中心とする地中海料理や、東南アジアのエスニック料理などのブームにのってその消費量は大幅に増えています。当店でもそれと判らない程度の隠し味も含め、殆どの料理に何らかのかたちでにんにくが使われています。

 あまりにんにくが好きで無い方は、たとえばグラタンを造るときグラタン皿の表面に、にんにくの切り口で軽くこすりながら香りを付けておくと、出来上がりの風味が違ってきます。このように、あくまでも料理の引立て役として使うだけでも、今迄の御家庭で造っていた定番料理がひと味もふた味もランクアップしますよ。


7月の素材 クレソン

 暑い日が続くと食欲が落ち、水分ばかりを採りがちになりますが、そうすると体力が無くなり夏バテ気味になってしまいます。やはり栄養のある物を採らないと、夏を乗り切れません。今月は独特の香りと爽やかな食感で、食欲を増進させてくれる野菜をご紹介します。クレソンは普段はステーキなどの、肉料理のつけ合わせで登場することの多い野菜です。それはそれで大変理に適った組み合わせなのですが、どうしても脇役でしかありません。時々はメインの素材として料理をするのも、目先が変わって楽しめるものです。

 クレソンはフランス語の呼び方です、英語ではウオーター・クレスと呼ばれます。クレスは芥子菜のことですから、和名はオランダ水がらしと言うそうです。もちろん輸入植物ですが、いまではきれいな水の流れている所で自生しているのを、見かけることも珍しくありません。学制時代アルバイトをした軽井沢のレストランでは、毎朝近くの疎水で自生しているクレソンを採りに行くのが日課でした。新鮮なみずみずしいクレソンはサラダは勿論ですが、かるく湯がいてお浸しにしたり、和え物などにすると爽やかさあふれる一品になります。

 さて、当店のクレソンを使ったお勧め料理は、「クレソンと若鶏のポタージュ」です。ポタージュなら暑さで弱った胃腸にも、すんなり受け入れられる優しいメニューだと思います。私どもはもう少し手を加えるので、下記のレシピとは若干造り方が違いますが、御家庭で簡単に作れますので、トライしてみてください。みじん切りにした玉ネギをバターで炒め、適当に千切ったクレソンとパセリを少々加えさらに炒めます。鶏肉は皮を除いた胸肉を、サイコロ状に切り鍋に入れ一緒に炒めます。鍋に水と固形スープの素を入れ、最後にとろみを付けるため御飯を少し加えます。鶏に火が通ったら、ミキサーかフードプロセッサーにかけ、裏ごしをします。ふたたび鍋に戻し生クリームを加え、塩・こしょうで味を調えれば出来上がりです。


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