今年も梅雨に入り湿度の多いうっとうしい日々が続いていますが、あまり歓迎されていないこの梅雨も一年のサイクルの中では、とても重要な時期で我々の生活上無くてはならない気象現象なのは周知の事です。先日何気なく聴いていたラジオで、お天気キャスターの森田さんが、梅雨の効用についてお話されていました。森田さんによると、梅雨は多くの雨を降らせ田畑や植物を潤すだけではなく、雲が日光を遮ることによって気温の上昇を抑えたり、年間で最も強くなる紫外線が私たちの肌に当たるのを防いでくれる役目をしているのだそうです。ですから昼の時間が最も長くなるこの時期に、もし梅雨がなければ容赦なく照り付ける日の光によって気温が上がり、紫外線量も増え今よりもっと不快な状態になるのだそうです。そう考えるとうっとうしいなどと、梅雨を毛嫌いする身勝手さを恥じるばかりです。しかし、毎日雨模様の日がつづくと気分がすっきりしないのもまた偽らざる気持ちです。そんなときには思いきり軽快な音楽を聴くにかぎります。今回ご紹介するアルバムは、ジャズに革命をもたらしたと言われるビ・バップと呼ばれる演奏スタイルを創りあげた中心的存在の、チャーリー・パーカーとディジー・ガレスピーが組んだスタジオ・セッションの貴重なアルバムです。二人は私生活のうえでも無二の親友でしたから、セッションにおける掛け合いも見事で、そのときの光景が目に浮かぶようです。
そして、このアルバムをさらに特徴付けるものとして、同一曲の別テイクが同じアルバムに並んで収録されていることが挙げられます。ご存知の様にジャズはアドリブの音楽ですから、曲は同じでも同じ演奏はありません。スタジオ録音の場合、普通は何度か演奏したうちの一番良いと思われるものがマスター・テイクとしてアルバムに入ります。しかし、天才と呼ばれるパーカー程になるとすべてがマスター・テイクと言って間違いではありません。特に熱烈なファンになれば、すべての録音を聴いてみたいと思うものです。このアルバムはそんなファンの願いをかなえた魅惑の一枚です。梅雨のひとときアルト・サックスとトランペットのハイノートに浸ってみるのも一興です。
豊かな才能を持った個性的なミュージシャンがユニット・バンドを組み、一定期間活動する例は特に珍しいことではありませんが、その先駆けのひとつであり最も成功したのが"C・S・N&Y"だと言えるでしょう。"C・S・N&Y"はかつて"バッファロー・スプリングフィールド"でニール・ヤングとともに活動していたスティヴン・スティルスが、デイヴィッド・クロスビー、グレアム・ナッシュと組んだ"C・S&N"が発展したグループです。このグループの受けた評価とともにニール・ヤングも不動の名声を得て、やがてソロ活動へと移って行きます。1972年に発表されたアルバムで、彼にとって4枚目になるこの"ハーヴェスト"は、たちまち大ヒットを記録し、収録されている"孤独の旅路/HEART OF GOLD"は全米チャートで第一位を獲得しました。この商業的成功によりニール・ヤングの評価はいちだんと高まり、より幅の広い支持者を得ることとなります。しかし、それ以上に彼にとってこのアルバムの持つ意義は、その後の活動の重要な指標となっている点です。現在まで40枚に及ぶアルバムを発表し続けていますが、彼自身が最も好む一枚に必ず挙げるのがこのアルバムです。
簡潔でアコースティックなサウンド、心の内面をやさしい言葉で表現する歌詞、カントリー・ミュージックを下敷きにした素朴さ、それらが渾然一体となって紡ぎだされる彼の音楽は、自然そのままに素直にしみてきます。あの鼻にかかった独特の歌声は押し付けがましいところがなく、さりげなさを装っていますがいつまでも心に残る不思議さを併せ持っています。若葉をわたる五月の風にも似た、今の季節にふさわしい一枚です。
春は出会いと別れが交錯する季節です。新しい学校や職場に入り希望に燃えている人も、昨日まで一緒だった友達や家族とは別々の生活をしなければいけません。まして親元を離れ初めて一人で生活をするひとにとっては、春は心浮き立つ思いばかりではないはずです。慣れない街での生活に戸惑うことばかりの毎日でしょう。行き交う人々はみな他人には無関心で、自分の事など気にもかけてくれません。時折、雑踏の中で話し掛けてくるのは、商品の勧誘やチラシを配るお金目当ての怪しげな人たちだけです。そんな暮らしがしばらく続くと、孤独感と寂寥感がつのり、しだいに心にバリアを張り見えない仮面をかぶり、自分をまもろうと必死になります。このアルバムのタイトル曲"ストレンジャー"そのものです。そこには、あの特徴的なピアノと口笛のイントロのあとに「だれでも もうひとつの顔を持っている 人目から永遠に隠してしまおうとする顔を・・・」と唄われています。
ビリー・ジョエルが1977年に発表したこのアルバムは、瞬く間に世界中で大ヒットを記録しました。ビリー・ジョエルはニューヨークに生活する男や女のさまざまな思いや、都会に暮らす者の孤独感をテーマにした曲を数多く書いていますが、このアルバムに収められている"ストレンジャー"や"ジャスト・ザ・ウエイ・ユー・アー(素顔のままで)"などはその代表的な作品です。最近は目立った活動を休止している、ビリー・ジョエルですが、彼にしか表現しえない独自の音楽世界を再び聴きたいファンが世界中にたくさんいるはずです。